たんなる一生懸命にはなんら価値がない。
一生懸命が価値をもつためには、
正しい理論にもとづくことが前提条件だ。
            
       本田宗一郎(本田技研創業者)


すごく良い言葉ですね。

久しぶりに心を動かされました★


一生懸命って言うのは簡単です。

でも一生懸命が
担当する患者さんの人生を
よりよい方向や選択肢に導くことができてるのか?

それが経験論という
あいまいなものじゃなく…


いつも思います。

そして経験論の押しつぶされて
新しい考えに取り組もうとして
つぶされてしまう
若いセラピストの先生を見たり
他の病院の仲間から
話しを聞くと

経験がそんなにえらいのか?

と言いたくなります。

もちろん経験は大事です。


でも努力して
色々試行錯誤している先生を
(努力していない若い先生は含みません)
はなから違うとつぶしてもいいのでしょうか?

その先生方は
若い頃からそんなに
素晴らしかったんでしょうか?


とまぁ愚痴ですが…

世渡り上手くいきたいですね(笑)


だけど経験論に勝つには
知識や正しい理論に基づいて
説明ができるように
ならないといけません

そしてそれを患者さんの
変化に結び付けないといけません。

口だけで偉そうなことゆうてても
上の先生は納得させられませんからね。


うちはそうしていきます。

10年目のセラピストに5年で追いつくために
20年目のセラピストに10年で追いつくために

いいとこどりで。


とまぁ最近
後輩のことや他の病院の若いセラピストの現状を
聞くと
納得できないことだらけなので
ブログに書いちゃいました。

自分の力になれることは
なりますんで☆



話しはタイトルの小脳疾患の難しさについて
に戻ります。

10月から訪問リハに異動となり
うちの病院は総合病院併設の
訪問看護ということもあり
SCD(脊髄小脳変性症)や
ALS(筋萎縮性側索硬化症)など
の難病の方の訪問のリハも行っています。

そこでもSCDの方は毎日必ず一人はいる
くらいの感じで関わらせてもらってます。

また先週の土曜は
訪問はお休みのため
他の病院スタッフの患者さんを
その日だけ担当、という形で
ヘルプに入ります。

そこで小脳梗塞の患者さんを
担当させてもらいました。

今回はその方のことではなく
やっぱり小脳疾患患者さんは難しい

ということで
何で難しいのか?
ということの
私見を書こうかと思いますね★


学校レベルの教科書では
小脳障害では
いわゆる協調運動障害や平衡障害
なんてのが出現する、って書いてあります。

臨床的にもそうですよね。

でもなんで起こるか?
はあまりはっきり書いてありません。

なんであんなに全身フラフラ揺れるんだ?
ということです。

何度か上の先生にも
若い頃聞いたことがありますが

大抵…
小脳だから揺れるのしょうがないんじゃない?

なんて
答えのような答えでない答え
しか返ってきません。

じゃあどうすりゃいいねん。

ということで最近
色々勉強しました。

毎日出あうSCDの方のためにも。


ということで
適当に思ったこと書いちゃいます。

むかぁしむかしは
そりゃまぁ小脳障害=失調
という運動障害にばかり
スポットが当てられてました。

今でもそう考えてる先生も
多いように思いますが。


言いたいことは
でも運動機能にアプローチしてる割には
失調治らないよね…

というのが
自分の率直な意見です。

ということは筋力や外部で観察される
バランス障害にアプローチしても
あまり変わらない…

そして小脳の患者さんは
学習自体も難しいですよね。

アプローチ後
運動パターンが変化したとしても
数分後には
元に戻る…

さっき言ったじゃん…
もう戻ってんじゃん…

と患者さんに突っ込みは入れますが

それは自分のアプローチが悪いだけです。


ということでいつも話しているように
小脳患者さんの目に見える
運動障害や学習のしにくさは
どこから来てるんだいっっ?
ってことですよね。

ということで文献的考察。

視空間的な統合困難・視空間的な記憶の機能不全
これは運動前野と関連する。


→これが運動失調とつながりがあると考えられる原因ですかね。
 次に述べる運動イメージとあいまって。
 自己の身体を空間内で自由に操るために
 身体イメージが存在します。
 その身体イメージは自己と空間の関係性から
 作られると言われてます。
 だから小脳の障害で視空間情報にエラーが生じてしまうと
 これまでの身体イメージを頼りに運動をしても
 情報の取り込みの時点でエラーがあるため
 歪んだ情報を元に運動プログラムを立ててしまい
 結果的に目標物へのリーチングができなくなったり
 視空間情報と身体の結び付けが上手くできなくなり
 体幹失調を含めたバランス障害が生じる
 のかもしれません。


1990年にIngvarらのグループにおいて、
手の運動をイメージすると大脳皮質の
運動野に局周的な脳血流量の増加を認め、
さらに小脳においても同様の局所的な血流量の増加を認めたという.
これは、運動イメージが大脳皮質の運動野だけでなく、
小脳機能も関与している事を示唆するものとなった.


→これは最近よく言われてますよね。
 運動イメージ、つまり予測に関与していると。
 だからこそFB情報に頼ってしまったり
 予測できないからこそ
 動かないように四肢を固めて
 バランスをとろうと
 (動かないようにしようと)
 してしまうかもしれないですよね。
 運動イメージ=運動プログラム
 とも捉えられるので。

Gottwaldらは小脳切除は注意機能を低下させることを指摘している.
注意分配課題、作業記憶課題で低下を認めるが、
選択的注意課題の低下はないと報告している.


→そうなんです。小脳患者さんは聞けば単一の感覚にも注意を向けられます。
 はっきりしないことも多いですが。感覚障害ではないですしね。
 でも分配は難しい。
 だから上肢のリーチング課題時にも
 姿勢制御というリーチングのための準備の活動が
 できないんかもしれないですね。

注意力,記憶,処理速度,情緒障害、視覚構成 (visual constructive copying)
などに影響がある

→注意・記憶や視覚的な問題に加え、処理速度にも問題がある印象は強くします。
 しゃべっていても、発語にしにくさはもちろんのこと、
 質問に対する反応が遅くないでしょうか?
 自転車の乗り方のような運動感覚の記憶や
 筋感覚そのものが入力されている小脳。
 脊髄小脳路を介して筋感覚は小脳に入ると
 言われています。

 ということは筋の感覚は無意識的に処理されてしまう…
 でも実際には筋の感覚は意識できるような気もする…
 
 なぜ無意識に処理されているはずの感覚を
 感じることができるのか?

 これはまた別の機会に…



ともあれ
小脳障害ではこれまでの経験で完成された
運動感覚の無意識的なパターンが崩れてしまいます。
そのためその時に必要な情報を
予測的に使うことができないのかもしれません。
何に注意を向け
どのような感覚情報を頼りに
運動したらいいのかを
プランニングすることができないのかもしれません。

また視空間認知の崩れから
今まで通りの身体-環境との関係で
学習されら運動パターンが
崩れた情報を頼りに
プランニングしてしまうために
結果的に
外見的には
環境に適応できていない
つまり運動失調として出現してしまうのかもしれません。

ただ筋トレをしていたらいいのでしょうか?

鉄棒ができない子どもは
筋力が足りないのでしょうか?

筋力だけでは説明できません。

小脳疾患は特に強く思います。

★I丸先生、是非ご意見をお願いします★