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脳卒中片麻痺の方に使用することの多い下肢装具。


脳卒中治療ガイドライン2015では

1.歩行や歩行に関連する下肢訓練の量を多くすることは、歩行能力の改善のために強く進められる(グレードA:行うよう強く勧められる)。


2.脳卒中片麻痺で内反尖足がある患者に、歩行の改善のために短下肢装具を用いることが勧められる(グレードB:行うよう勧められる) 



と積極的な歩行訓練や下肢訓練、装具の使用は歩行能力の改善につながるとされています。


また痙縮に対しては

上下肢の痙縮に対しボツリヌス療法が強く勧められる(グレード A)

慢性期片麻痺患者の痙縮に対するストレッチ、可動域訓練が勧められ る(グレード B) 


とあります。


装具の使用は
歩行能力(歩行距離・耐久性や歩行速度、自立度)の改善・向上にはつながるが、痙縮を改善する訳ではない、ということでしょうか?


医療費の面から見ても、

装具の作成費用は、装具使用での歩行能力の向上により入院を短縮できれば医療費と相殺できると思われます。

装具の作成の消極的な所もあるという噂も聞きますが、メリットデメリットを考えた上で医師とともに処方や装具の種類を検討すべきだと思います。



また運動学習の面からも、

装具の種類の選択や角度などの調整により、運動自由度(参加する関節の数や、関節運動の範囲の設定)を制限することで歩行難易度を落として、今ある機能を上手く使いながら(自分で)歩くという達成感を作り出しながら、反復練習ができる。

制限・制動角度や油圧やカーボン支柱にて動きをアシストしたりする装具も最近はあります。

何よりも再現性がありますし、ベテラン・新人関係なく(もちろんフィッティングや制限・制動角度の微調整の部分はありますが)汎用性もありますね。

というメリットが考えられます。 



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ここからは実際に担当している方のお話。


今、私は訪問で、お二人の装具を使用し、日常生活を自立している片麻痺の方と関わっています。


装具歩行にて自立し、退院され数年が経ち、自宅退院後訪問にて関わっています。
今回はそのお一人、Aさんについて書こうと思います。

Aさんは約8年前に発症され、1年半ほど前より担当させて頂いています。


Aさんは、自宅内では装具を使用せず歩いています。
しかし介入当初は、内反尖足・膝伸展ロック・分回し歩行が著明でした。
外出にもよく行く方で、外出時には金属支柱SLBを使用しています。

屋内外とも転倒はなく歩行できています。


Aさんは
屋外へご家族やご友人の方と出かける際、装具があれば速く歩けるし、つまづいたりすることを気にしなくても良いから装着している、とのこと。自分だけ歩くスピードが遅くて周りに気を遣わせたくないという思いがあります。また装具使用時の方が長距離では疲れにくい(歩容が変わりにくい)とのことです。

装具を使用することで、高い痙性がありながらも日常生活において実用的な歩行速度と耐久性を得られる、という訳です。



しかし、逆に考えると麻痺側を参加(いわゆる共同運動パターン優位ではなく、分離運動を使う)しての歩行となると、速度は落ち、また非常に疲れやすく、短距離・短時間で徐々に疲労から共同運動パターン優位の歩行に戻ってしまいます。


この方は、今は
麻痺側の身体をできるだけ自然に使えるようにしたい
知らない人が見ても、分からないくらいの姿勢や動きにしたい
という思いもあります。 


私が訪問で関わりだしたのは一昨年の春。
初めての訪問で歩行を見せてもらいました。

自宅内では装具は使用せず、

振り出し:分回し・体幹を非麻痺側に大きく傾ける
支持:膝伸展ロック・内反尖足・お尻は引け体幹は前傾

が著明でした。


でも、この時「何か歩きに関して、やりにくさとかはありますか?」とAさんに聞くと


「歩きは、大丈夫です!!!」


ということでした。


セラピストから見たら、典型的な片麻痺歩行としてしまう歩きを、Aさんは大丈夫とおっしゃる。


この言葉の背景は何だろうか?


あくまで推測ですが、
歩行は自立しており、転倒もなく、買い物や旅行にもいけている。
だから歩けなくて困っていることはない。

ということから来る言葉だったのかもしれません。


そして上記のパターン化されていた歩行が
当たり前となっていた可能性があります。


振り出し:分回し・体幹を非麻痺側に大きく傾ける
支持:膝伸展ロック・内反尖足・お尻は引け体幹は前傾


装具歩行は上記のパターンがあったとしても、
長距離である程度の歩行速度を得られる、というメリットがあります。


これは家族や友人との外出や旅行などでは
歩く速度が遅くなることで
相手に気を遣わせたくない。

歩容はともかく、歩行距離が延びても
変わらないパターンで歩く。

というためには装具は有効であると言えますね。



デメリットは…というと、

痙縮ありきの動作パターンは残存、そして装具に支持を依存した動作パターンが作られてしまいやすいことですね。

もちろん装具によって、うまく潜在能力を引き出せる方もいます。


しかしLLBからSLBに変えた際に膝折れや膝ロッキングが出現する。

SLBからオルトップや裸足での歩行にした際に内反尖足や膝ロッキングが出現する。


このような場合は装具ありき、装具の硬さに依存した麻痺側下肢の運動パターンが定着している可能性がありますね。


あなたは装具をどんな目的で使用していますか?


次回は私の考える装具の活用法です!!!!